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貨物輸送業界の動向と展望

(2024/11/29更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■トラック輸送業の業績動向
■海運業の業績動向
■航空貨物輸送業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図
■関連コンテンツ

■業界の概要

貨物輸送業界の構造

貨物輸送業界は、トラック輸送業、鉄道貨物輸送業、海運業、航空貨物輸送業、および他社の輸送手段を利用してサービスを提供する利用運送業(フォワーダー)に分類される。

それぞれの業種は輸送手段の特性や貨物の種類、輸送距離に応じた役割を担い、物流網の多様性と効率性を支える重要な要素となっている。

トラック輸送は、道路網を利用して特定の地点に直接荷物を届けるため、荷主のニーズに応じた柔軟な配送に対応することができる。とくに少量の荷物や即日配送が求められる場合に強みを発揮する。

海運は、大規模輸送を行うための主要な手段であり、とくにコンテナ輸送においては、数千トン単位の貨物を一度に移動させることができる。反面、輸送に要する時間は長くなる

航空貨物輸送は、長距離輸送を迅速に行うことができる反面、高コストかつ輸送量は限られる。そのため、迅速な配送が求められる品目や、医薬品や医療機器、電子機器、美術品や宝飾品といった付加価値の高い品目の輸送手段となることが多い。

フォワーダーは、主に国際物流において、自らは輸送手段を持たず、他社の輸送手段を活用して輸送サービスを提供する事業者。顧客のために最適な輸送ルートや手段を選定するほか、通関手続きや保険手配、輸送状況のモニタリングなどを行い、顧客の業務負担やリスクを軽減する。

DXなどによる物流効率化が収益性向上のカギ

近年の燃料費の高騰や円安の影響により、企業の収益性は圧迫されている。一方で企業間の競争は激しく、価格競争による利益率の低下が懸念される。

そのような中で各社は、運行管理や配送ルートの見直し、共同配送の実施、再配達の削減などによる効率化や、トレーサビリティ向上などのサービス品質向上を図っている。これを実現するため、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが加速しており、IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)を活用した物流プロセスの最適化が期待されている。

人手不足と働き方改革への対応

少子高齢化による人手不足が、業界の大きな課題となっている。

とくにトラック輸送業では、長時間労働が人手不足を招く深刻な問題となっている。ドライバーの高齢化や若年層の確保が難航しているため、輸送能力の低下や配送遅延が発生している。

働き方改革関連法案により、労働時間管理が厳格化される中、2024年4月にはトラックドライバーの残業時間に上限規制が適用された。これによる物流の停滞、いわゆる「物流2024年問題」に対し、業界ではDXなどを活用した業務効率化が急務となっている。

環境問題への対応

脱炭素社会の実現に向け、EVトラックやハイブリッド車両の導入、鉄道や海運へのモーダルシフト推進、航空輸送におけるSAF(持続可能な航空燃料)の導入など、環境に配慮した輸送手段が注目されている。これらへの取り組みは、企業の社会的責任の履行のみならず、顧客からの信頼獲得、ひいては企業の競争力にも影響を与えるとみられる。

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