■市場の動向と展望
■工作機械製造業の業績動向
■切削工具製造業の業績動向
■工作機械卸売業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図
工作機械は「主として金属の工作物を、切削、研削などによって、または電気その他のエネルギーを利用して不要な部分を取り除き、所要の形状に作り上げる機械」と定義される(日本産業規格)。旋盤、ボール盤、フライス盤、研磨盤といった基本的な工作機械から、複雑な加工を自動的に行えるマシニングセンタやターニングセンタなど、多岐にわたる機械が存在する。これらは部品製造の基盤として幅広い分野で使用されており、「機械を作る機械」であることから「マザーマシン」とも呼ばれる。
一般機械および自動車製造業向けが主な需要先となっているが、近年ではEV(電気自動車)用のモーターや電池部品の製造用機械、半導体製造装置関連、新エネルギー関連設備などの分野で新たな需要が生まれている。
需要は販売先業界の景気動向に敏感であり、設備投資の増減にともなって大きく変動する。2022年までの直近5年間では、工作機械の受注金額は0.9兆円から1.8兆円の間で、景気の波に応じて拡大と縮小を繰り返している。
日本の工作機械は、加工精度、耐久性、信頼性において高い国際競争力を有する。とくに航空宇宙や医療分野など、高精度が要求される分野での評価が高い。また経済安全保障推進法に基づく特定重要物資に指定されており、安定供給のための施策が取られている。
輸出比率が高く、内需より外需の方が大きい。そのため、為替相場の変動リスクや各国の貿易政策や税制、環境規制、安全基準の影響を受けやすい。一例として、欧州連合(EU)の厳格な環境規制に対応するため、エネルギー効率を高めた機種が開発されていることが挙げられる。
近年ではIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用した「スマートファクトリー」化により、工作機械の生産性を大幅に向上させる取り組みが進行中である。例えば、リアルタイムでの稼働状況のモニタリングやAIによる不良品予測が、製造現場で実用化されつつある。
また、顧客の環境意識の高まりや環境規制への対応のために、省エネルギー化やリサイクル可能な素材の使用といった、環境対応型の技術開発も求められている。
工作機械が切削、穴あけ、研磨などの加工を行うために使用する工具を「切削工具」と呼ぶ。具体的には、金属やプラスチックなどの素材を削るためのエンドミル、正確な穴あけ作業に用いられるドリルビット、ねじ穴を形成するタップなどがある。
これらのうち、タングステンとコバルトを主原料とし耐摩耗性に優れた「超硬合金」を使用したものを、「超硬工具」と呼ぶ。材料の組成や製造技術によって耐久性や加工効率が大きく異なり、その性能が工作機械による加工の精度や効率を大きく左右する。いずれも消耗品で定期的な交換が必要となるため、工作機械の運用コストや生産性に直接的な影響を与える。
タングステン・コバルトの供給状況や価格動向は超硬工具のコストに影響を与えるため、安定した材料供給が求められる。そのため切削工具メーカーは、超硬工具のリサイクルにも取り組んでいる。