■業界の概要
■市場の動向と展望
■製鉄・製鋼業の業績動向
■鉄鋼卸売業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図
鉄鋼業界は、鉄鉱石から鉄を生産する「高炉業」、電気炉で鉄スクラップを溶解して再び鋼材を生産する「電炉業」、鉄にニッケルなど様々な元素を加えた合金鉄を生産する「特殊鋼・ステンレス鋼製造業」、鋼材を様々な製品に加工する「鋼材加工業」それらの流通を担う「鉄鋼卸売業」などで構成される。
あらゆる用途に使用される鋼材であるが、中でも建設向け、自動車向けの割合が高く、これらの動向が業況を左右する。
生産量のうち、国内向けと輸出の比率はおよそ6:4となっている。国内需要は人口減や経済成長の鈍化により漸減傾向にあることから、その中で利益を出せる経営体質への転換や、成長余地がある海外への事業展開が成長のカギとなる。
国内生産の約75%を担う高炉メーカーは、老朽化した高炉の休止や生産拠点集約などの合理化を加速させている。また、成長が見込まれるインドや東南アジアなどの地域における、現地生産を強化している。
鉄鋼業界の流通形態は、主に「ひも付き」と「店売り」に大別される。
「ひも付き」は長期的な取引を前提に、鉄鋼メーカーとユーザー企業が直接交渉によって価格を定める形態。契約期間中は市場価格の変動に関わらず一定の価格が維持される。高品質な鋼材を大量かつ安定的に必要とする自動車産業や造船業界などとの間で採用されている。高炉メーカーの製品の大半がこの形態で販売されており、大口ユーザーとの交渉結果が高炉メーカーの業績に大きく影響する。
「店売り」は、鉄鋼商社や小売業者を介して一般市場で販売される形態。製品価格は、原材料価格や需給バランスによって常に変動する。
原材料価格やエネルギーコスト、人件費などが高騰する中、いずれの取引形態においても、適正価格の維持が、業界各社にとって重要な経営課題となっている。
石炭を原料とするコークスを燃焼させて製鉄する高炉は、大量のCO2を発生させる。そのため鉄鋼業のCO2排出量は、国内の産業部門の約4割を占めている。
鉄鋼業のCO2削減は業界だけでなく、日本全体で2050年のカーボンニュートラルを目指す国の計画にとっても重要な課題となっている。そのような中で高炉メーカーは、既存設備の低炭素化に加えて、従来は難しかった電炉による高級鋼の生産や、水素エネルギーによる製鉄などの新技術開発に取り組んでいる。
鉄鋼メーカーの多くは原材料在庫を総平均法で評価しており、原材料価格が変動すると、会計上の原料単価も変動する。
原材料価格が上昇すると、過去に安く調達した原材料が会計上の原材料単価を引き下げ、増益 要因となる。逆に原材料価格が下落すれば減益要因となる。
そのため、原材料の在庫評価差を除いた利益が、「実力ベース」での利益として重視される。