■業界の概要
■市場の動向と展望
■石油化学製品製造業の業績動向
■化学品商社の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図
石油化学工業では、石油ナフサや天然ガスを原料に、基礎製品・誘導品(中間材料)を経て、合成樹脂・合成繊維原料・合成ゴムなど多様な化学製品を製造する。
石油精製工場で分けられた石油製品のひとつであるナフサは、ガソリンに似た透明な液体で、そこから化学反応を通じてエチレン、プロピレン、ブタジエンなどの「基礎化学品」が製造される。日本は、ナフサの国内需要の約7割を輸入で賄っている。一つの工程で同時に複数の製品が生産される「連産品」により製造されていくことも化学産業の特徴である。
ナフサの供給を受けてエチレンの製造を担う「エチレンプラント」(エチレンセンター)は、全国8地域に12基が立地している。
基礎化学品を原料とするポリエチレンやポリプロピレンなどは「石油化学誘導品」(中間製品)と呼ばれ、自動車や電子・電気製品、建設、医療、包装など幅広い産業・業界で製品に利用される。特に日本の化学メーカーは「機能性化学品」と呼ばれる、自動車や航空機などの輸送機器、半導体や電子機器向けの付加価値の高い製品市場において強みを持つ。
ナフサなどの原料価格やエチレンプラントの稼働率が、川下の高機能製品のコスト競争力にまで影響を与える構造となっている。
石油化学製品は、世界的な電化の進展やエネルギー貯蔵分野における需要の高まりから、世界市場では今後の成長が見込まれる一方、内需は最終需要家である製造業の海外移転や景気低迷で長期的に減少し、生産能力との乖離が拡大している。
2010年以降、国内エチレン設備の最適化が進められ一部のプラントが廃止されたが、内需と生産能力の乖離から、エチレンプラントは低稼働を余儀なくされている。また、エチレンプラントは2年または4年に1回の定期修理(定修)を法律で義務づけられており、その負担も大きい。
国内生産のうち3割を占める輸出においても、中国を中心とした大型石油化学プラントの新増設により苦戦が続く。今後さらなる事業環境の悪化が予想されることから、大手化学各社による、国内拠点の再編が本格化している。