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水産業界の動向と展望

(2024/11/29更新)

【目次】

■業界の概要
■市場の動向と展望
■水産・水産加工業、水産卸売業の業績動向
■統計データ、関連法規・団体
■業界天気図
■関連コンテンツ

■業界の概要

漁獲量は減少傾向

水産業界は、水産物の採捕を行う「漁業」、人工的に繁殖させる「養殖業」、水産物を原料に缶詰・練り製品・冷凍食品など様々な食品を製造する「水産加工業」、これらの流通を担う「水産卸売業」で構成される。

水産物は鮮度維持のため冷蔵・冷凍状態で保管・輸送されることから、冷蔵倉庫業などの低温物流企業も、水産業に参入している。

島国である日本は豊かな水産資源に恵まれ、それらが食生活の中核を占めてきた。しかし近年は、気候変動による魚海況の変化や乱獲による水産資源の枯渇、それらを受けての水産資源管理や諸外国との漁業協定などにより、日本の漁獲量は減少の一途にある。

漁業従事者も減少傾向

漁獲量の減少が、漁業従事者の減少を招いている。農林水産省が2024年8月に公表した「2023年漁業センサス(概数値)」によると、全国の海面漁業の漁業経営体数は6万5,652経営体で、2018年の7万9,067経営体から5年間で17.0%減少した。

2018年の漁業法改正により企業の漁業への参入が促進されたことから、企業経営による漁業事業体は2,646社と、2018年の2,548社から3.8%増加した。しかし全体の減少に歯止めを掛けるには至っていない。

輸出入はともに拡大傾向

漁獲量の減少を受けて、魚価は上昇傾向にある。加えて洋食化の進行や調理の簡便化ニーズ、若者の魚食離れなどにより、国内の1人当たりの魚介類消費量は年々減少している。その回復に向けて、ライフスタイルの変化や消費者の簡便化志向に合わせた商品の開発が求められている。

一方、世界的な健康志向の高まりや日本食ブーム、新興国における所得向上や低温物流インフラの整備などにより、海外における魚食需要は高まっている。そのため水産大手は、輸出拡大や海外事業の強化を進めている。その結果、水産物の輸出額は、2012年の1,698億1,600万円から2023年には3,900億8,800万円へと、約2.3倍に拡大している。

また、輸入額も増加傾向にある。遠洋漁業の縮小や高級魚需要の高まりにより、魚種によっては自国漁獲だけでは需要を満たせなくなっていることや、海外養殖生産量の増加がその背景にある。また、世界的な需要の高まりによる水産物の国際価格の上昇も、輸入額増加につながっていると考えられる。

変化する業界環境への対応

水産業の業績は、海水温などの魚海況の変化や、国際的な水産物市況・為替レートの変動に大きく左右されるようになった。そのような中で業績を安定させるため、大手は養殖による安定生産や、水産加工食品・冷凍食品事業の強化を進めている。

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