日本経済の根幹を支える中小企業は、少子高齢化という深刻な社会問題に直面している。そのため、企業が持続的に成長し続けるために、省力化への取り組みが避けて通れなくなりつつある。ここでは、中小企業の省力化を取り巻く環境を整理し、その推進のポイントを考察する。
1.人口減少で「省力化」への取り組みが不可避に
2.省力化テクノロジーの急速な発達
3.中小企業の省力化における課題
4.中小企業の省力化投資に関する公的支援
5.まとめ
近年、日本の中小企業は深刻な人手不足に直面している。少子高齢化が進む中、労働力の確保はますます困難になり、企業の成長を阻む大きな要因となっている。
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」によると、正社員が「不足」していると感じている企業の割合は、53.4%と過半数を超えた。
そのような中、人材の確保・定着に向けて賃上げの動きが活発化している。しかし一方で、そうした動きに対応できない中小企業の倒産も増加しつつある。
「人手不足倒産の動向調査(2024年)」によると、従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする「人手不足倒産」は2024年に342件発生し、調査を開始した2013年以降で最多となった。
人口が減少傾向にある中、賃上げなどによる人員獲得競争はますます激化すると見られ、人手不足によって行き詰まる企業は今後さらに増加する可能性が高い。
このような中で企業が持続的に成長するためには、業務自体を根本的に見直し「省力化」することが避けて通れなくなりつつある。
近年、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの技術が急速に進化し、業務の自動化や省力化に活用することが可能となっている。
たとえば製造業では、AIを活用した自動検査システムや生産ラインの自動制御、IoTによるスマートファクトリー化などが進められている。流通業では、AIを活用した需要予測や、AIとIoTの組み合わせによる在庫管理・物流最適化、接客支援システム、無人レジなどが業務の効率化に寄与している。
建設業では、センサーによる重機や資材の位置把握や、ウェアラブルデバイスによる作業員の安全管理など、IoTを活用した現場管理が進んでいる。また、画像認識AIによる施工精度向上や、AI学習による技能継承なども試みられている。サービス業では、チャットボット導入による24時間体制での顧客対応や、タブレットによる注文システム構築、ロボットによる売り場案内や配膳、AIによる予約管理などが進んでいる。
今後、省力化テクノロジーの進化はさらに加速し、初期投資を抑えつつ最新の技術を活用することが可能となるだろう。中小企業にとっても導入のハードルが下がることが予想され、その取り組み姿勢が企業の競争力や、ひいては存続を左右することとなろう。