本連載では、日本企業の進出先として想定される世界各国の政経情勢を取り上げる。第24回はタイを紹介する。
タイでは、2023年の下院選挙を経て、2014年以来続いた軍主導の政治から民政へと移行した。本稿では、同選挙について、革新派の大躍進とそれに対する保守派の動きを概観したあと、現政権運営における課題、足もとのタイ実体経済、トランプ関税のタイ経済への影響について整理する。
■民政への移行に向けて有権者は革新派を支持
■タクシン派と反タクシン派が手を組む連立政権が樹立
■2024年の実質成長率は伸びを高めるも、民間需要は力強さに欠く
■2025年の成長は外需と設備投資が牽引
■トランプ関税が成長の下振れリスク
タイでは2023年5月に下院選挙が行われ、2014年以来続いた軍主導の政治から民政への移行が実現した。選挙を経て政権を樹立したのは、「タイ貢献党」を中心とする連立与党。2014年の軍事クーデターで政権を追われたタクシン・シナワット元首相の「タクシン派」を中心に据えた連立政権だ。
この下院選挙に関して着目すべきポイントは大きく2点ある。