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「水族館」の入場料平均、初の2千円台。運営コスト増が要因

■施設の維持管理コストは上昇続く。2025年以降も値上げ続く可能性

値上げの動きが「モノ」から「サービス」へと波及する動きが広がり、花火大会などコト消費にも「一部有料化」や「高額化」の動きが急速に広がっている。他方で、日本生命保険(大阪・中央)が実施したアンケート調査では、今年の夏休みについて予算を「減らす」と回答した人の割合が前年から増加し、「増やす」を上回るなど、娯楽に対する節約志向は強まる兆しを見せている。

こうした情勢を背景に、レジャー施設における2024年の値上げ施設数は前年から半減するなど、値上げの動きは鈍化した。ただ、電気代や人件費をはじめとしたコストアップを背景に「値上げに踏み切らざるを得ない」施設もあるなど、レジャー施設の値上げ圧力は引き続き高い傾向がみられる。2025年以降も、チケット料金改定に踏み切る施設が再び増加する可能性がある。

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■主要レジャー施設、約2割でチケット値上げ。高額化の動き鈍化。入場料平均は1629円

国内190の主要レジャー施設(遊園地・テーマパーク・水族館・動物園)のうち、2024年に入場料などの「チケット料金」を値上げする施設は全体の17.4%(33施設)であることが判明した。前年(32.1%・61施設)に比べて、チケット料金を値上げする施設数は半減した。

チケット料金の値上げはせず、駐車場代やアトラクション用の追加アイテム料金などを値上げする動きもあるものの、総じてレジャー施設における値上げラッシュは前年と比較して沈静化の兆しがある。また、一部施設では実質的な子供料金の値下げや無料化に踏み切る動きもみられた。

価格改定前後のチケット料金をみると、チケット種別や施設ジャンルによって傾向が分かれた。2024年におけるレジャー施設全体の「入場料」平均価格(大人1名)は1629円だった。23年平均(1586円)に比べ2.7%・43円上昇したほか、2022→23年における価格差(69円)に比べると上昇ペースは鈍化した。

遊園地・テーマパークで多く導入されている「フリーパス」平均価格は4502円に上り、2022年→23年(+4.6%・191円)に比べると上昇幅は2.9%・128円と鈍化したが、「入場料」平均を上回った。変動価格制の導入が進み、特に5月のGW期間など大型連休に最高値を引き上げる動きが広がったことも、フリーパス料金の上昇が続いた要因となった。

なお、国内主要レジャー施設において2024年内に設定されたチケット料金の最高額は、東京ディズニーリゾート(TDR、千葉)の「1デーパスポート」と、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪)の「1デイ・スタジオ・パス」で、いずれも大人1日チケットが1万900円だった。

施設ジャンル別にチケット料金平均をみると、最も「入場料」平均が高いのは「水族館」の2042円となり、前年平均から91円上昇したほか、調査開始以降で初めて2千円を超えた。餌代のほか、電動ポンプや館内空調などに使用する電気代の高騰が影響し、引き続きチケット料金を引き上げる動きが目立った。

「遊園地・テーマパーク」では1570円となり、前年平均から22円の上昇にとどまった。一方、最も低いのは「動物園」で、入場料の平均は1381円にとどまり、最高値の水族館に比べて700円近く安い水準だった。動物園でも飼料代の高騰など物価高の影響で厳しい経営を余儀なくされているものの、運営事業者が市町村など自治体・公営企業のケースが多く、機動的な値上げが難しいことも要因となっている。

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