観光庁は、2023年における日本人の国内宿泊旅行の旅行単価は63,212円/人・回(※1) (速報値)だったと発表した。コロナ禍以前の2019年の55,054円と比較すると14.8%増で8,000円以上の増加となっている。
国内宿泊旅行単価は、新型コロナウイルスの影響が一服した2022年の段階ですでに、2019年の旅行単価を超えていた。その背景には、抑制されていた旅行へのリベンジ消費による需要増加や原材料・エネルギーコストの高騰が大きくある。
さらに、価格転嫁の進展や、人材確保にともなう賃金の上昇も、観光地における飲食代やお土産代、宿泊料金などの値上げにそのまま直結し、旅行単価の上昇につながっているとみられる。
また、堅調に回復している訪日外国人の存在も、需要が供給を上回る状況を引き起こし、単価上昇が加速する要因となっている。とりわけ、帝国データバンクの「TDB景気動向調査」によると、「旅館・ホテル」の販売単価が上昇したとする割合(※2)は2022年8月以降20カ月連続で60%を超え、2024年3月時点では75.3%と4社に3社は上昇したと捉えていた。
2024年3月のTDB景気動向調査では、「旅館・ホテル」の60.0%の企業で景況感を『良い 』(※3) と捉えていた。他方、『悪い 』(※4)とする企業は16.7%にとどまった。特に3月は春休みシーズンを迎えるなか、企業からは「海外を含め国内のお客さまも多い」「ようやくコロナ前の売り上げ水準に戻ってきた」というように、明るい声が寄せられている。
また、コロナ禍で低下していた設備稼働率についても、2022年4月以降は『上昇 』(※5)と捉える企業の割合が『低下 』(※6)を逆転し、直近の2024年3月は59.7%となった。観光・レジャー需要ほか、出張需要の復活なども好材料となっていよう。
ただし、深刻化する人手不足への対応や、食材をはじめアメニティ、リネン関連費用、冷暖房費などの高止まりなどは企業収益を圧迫する要因となっており、宿泊料金の値上げは続くと見込まれる。その結果、国内のリベンジ消費が一巡する方向にあるなかで、消費者の宿泊離れを回避するために各社は独自性や希少性、高級感などの対応を迫られることとなり、生き残りをかけ優勝劣敗が顕著となっていくと予想される。