2月22日に日経平均株価が、バブル期に付けた史上最高値の3万8,915円87銭(1989年12月29日終値)を更新、さらに3月4日には4万円を超えた。2024年1月4日の大発会は3万3,193円05銭で始まり、3月4日の終値4万109円23銭まで、約2カ月で7,000円近く値上がりするなど株価は大きく上昇し、その後も高値を維持している。
1.株価の大幅上昇、停滞が続く日本経済に対するマインド『良くなる』が48.2%
2.株価上昇で「恩恵あり」は42.8%、「消費マインド向上」がトップ
3.まとめ
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TDB景気動向調査(2024年2月)によると、証券・商品先物取引業の直近の景気DIは65.3と高水準で推移し、企業からは日経平均株価の上昇を景気の押し上げ要因として捉える声も複数あがっている。また株価上昇が及ぼすプラスの影響として、資産効果のほか、中長期的には公的年金の制度維持、企業年金や退職金の運用利回りの改善なども期待される。
そこで帝国データバンクは、株価上昇が及ぼす影響について企業へアンケートを行った。
※アンケート期間は2024年3月8日~12日、有効回答企業数は1,059社(インターネット調査)
日経平均株価が、34年ぶりに史上最高値を更新した。株価の上昇が長らく停滞していた日本経済に対する企業や消費者のマインドが変わる(良くなる)、一つのきっかけになると思うか尋ねたところ、『変わる(良くなる)』と考える企業は48.2%で半数となった。内訳は、マインドが「変わる(良くなる)」が8.8%、「どちらかと言えば変わる(良くなる)」が39.4%だった。
他方、『変わらない』は44.4%(「どちらかと言えば変わらない」26.5%、「変わらない」17.9%の合計)となった。日本経済へのマインドが変わると考える企業と、変わらないと考える企業はいずれも4割台でわかれた。
企業からは、「有価証券保有の有無にかかわらず、社会全体の雰囲気が、今までの停滞ムードから少しは良い方向に向かう」(メンテナンス・警備・検査)、「株価最高値のニュースを見るだけでも、心理的に景気が回復してきているとの雰囲気になる。ただし株価に見合った賃上げが必要」(建設)と、株価上昇が世間の心理面や雰囲気にプラスに働くとの声があがった。
一方で、「企業や個人が保有する株式資産はごくわずか。実体経済と乖離している株高だと思っているので、今のところは期待していない」(鉄鋼・非鉄・鉱業)、「株価が上がっても企業の収益や消費者の所得が上がったわけではないので、当然マインドも変わらず恩恵も感じない」(機械製造)といった声も寄せられた。
昨今の株価の上昇による恩恵を直接・間接問わず受ける(見込み含む)と考えるか尋ねたところ、「恩恵あり」とした企業は42.8%と4割を超えた。
具体的な恩恵としては、「社会全体の消費マインドの向上」(50.1%)が最も高くなった(複数回答、以下同)。次いで、直接的な恩恵である「自社で保有する有価証券などの資産価値の上昇」が46.4%、「個人の購買意欲の向上」が32.9%で続いた。
他方、「現時点では恩恵を感じていない」企業は52.8%で、半数超の企業が現時点で見込みも含めて恩恵を実感できていない。
企業からは、「固定された給料は生活のために使い道がほぼ決まっている。投資での利益は少しの贅沢に使うマインドが起こる」(飲食店)、「株を多く保有している人は資産が増えることで消費マインドが向上する。それにつられて購買意欲を高める人も一定数いる」(繊維・繊維製品・服飾品小売)と、直接的な効果から間接的な影響へ徐々に広がるとの声が聞かれた。
他方、恩恵を感じない企業からは「ごく一部の投資家や大企業はともかく、一般消費者の実質賃金は下がり続けているため、恩恵を感じることはできない」(不動産)と、株価上昇による恩恵は限定的とみている。
本アンケートの結果、昨今の大幅な株価の上昇で、約半数(48.2%)の企業が日本経済に対する企業や消費者のマインドが良くなると捉えていることが分かった。また4割超の企業で、消費マインド向上や資産価値の上昇など直接・間接的な恩恵を受けると見込んでいる。
このまま株価が高値で推移すれば、中長期的に有価証券を持っていない企業や個人へもプラスの影響が間接的に及ぶと期待される。しかし、株価上昇だけでは企業の収益や消費者の所得を押し上げる効果は限定的であるため、現時点では恩恵を実感できていない企業の割合の方が多くなっている。
さらに企業や消費者のマインドが変わっていくには、原材料費や人件費の上昇分を適正にサービス・商品価格へ転嫁する必要がある。また、生成AIを含めた新技術の活用などで収益性を改善し、継続的な賃上げ実施を通じた実質賃金の上昇、設備投資の増加という好循環へつなげていくことが重要となる。
今回の株価上昇が、日本経済の失われた30年から潮目が変わるきっかけの一つとなり、景気の好循環につながることが期待される。