半数が「赤字」。賃上げコストの負担重く
タクシー・ハイヤー業界では不足するドライバーの確保に向け、賃上げによる待遇向上の必要性が指摘されている。
ただ、2022年度の業績動向では足元の需要回復や単価上昇を受けてもなお半数が「赤字」で、コロナ禍で大きな打撃を被ったタクシー会社では賃上げ原資の確保が容易ではない現状もみられる。
LPガスなど燃油価格の高騰も収益を圧迫しており、賃上げ可能な収益力を確保できる企業が限られることも中小タクシー会社でドライバー不足の解消が進まない要因の一つとなっている。
一方で、配車アプリの活用で「流し」営業や歩合制を廃止し、安定した収入環境をPRすることでドライバーの維持・確保につなげるタクシー会社もある。
時給制の採用や、企業内保育所の設置などでスポット的に働ける環境を整備し、女性ドライバーの応募を獲得するケースもあり、人手確保に向け、勤務体系や福利厚生等の待遇面での柔軟な対応も今後必要となってくる。
タクシーの現場でドライバー不足が深刻化してきた。
国内でタクシー・ハイヤー事業を展開する企業で、ドライバーを含めた従業員数の推移を調査した結果、10年前の2013年時点に比べ、対象2428社のうち69.7%にあたる1691社で「減少」した。
このうち、13年からの減少率が「5割以上」となった企業は14.5%・352社にのぼり、タクシー会社の1割超で従業員数が10年前から半数以下に減少した。
[注]全国のタクシー・ハイヤー業を対象に調査・分析を行った。なお、従業員(人手)にはドライバー以外の職種も含まれるケースがある
タクシー会社の1社あたり従業員数の推移をみると、2013年は平均で66人/社の水準だったものの、以降は漸減傾向で推移し、23年8月時点では52人/社に減少し、10年前から約2割減少した。
特に、コロナ禍でタクシーの売り上げが大きく落ち込んだ20~22年にかけて、前年からの減少率が拡大するなど、大幅な従業員数の低下がみられた。
タクシー・ハイヤー業界では、コロナ禍による移動制限の緩和に伴う観光やビジネスの移動需要が急速に高まった。
また、全国各地で初乗り料金の上限が引き上げられるなど実質的な値上げも背景に客単価が上昇した企業は多く、タクシー需要に強い追い風が吹いている。
ただ、足元ではコロナ禍で同業他社や他業界に転職・離職した従業員が戻ってこないほか、コロナ禍での収入減といったマイナスイメージから「若手(新人)の応募が来ない」といった企業も散見された。
定年退職や体調不良で退職する高齢ドライバーも年々発生するなか、若手社員や中途ドライバーの採用で不足分を埋めることが難しくなっており、タクシー保有台数に対してドライバー数が足りず稼働率を低下させるケースが、地方のみならず都市部でも発生している。
従業員数が「半減」となったタクシー会社の割合を都道府県別(本社所在地)にみると、最も割合が高かったのは「茨城県」で29.2%を占めた。
「香川県」(29.0%)や「奈良県」(25.0%)など、地方を拠点とするタクシー会社で従業員数が10年前から半減している企業が多い一方、埼玉県や大阪府など需要の大きい都市部でも、従業員数が大幅に減少した企業が多かった。
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