観光目的の訪日外国人客受け入れが再開して1年が経過し、ビジネス目的などを含めた2023年の訪日客数は年間2千万人超のペースで推移している。国内旅行客の回復に加え、インバウンド増も重なり、旅館・ホテル業界の業績回復に強い追い風が吹いている。
今後の動向は「人手不足」による稼働率低下の回避が焦点となりそうだ。帝国データバンクの調査では、旅館・ホテル業界の人手不足割合は正規・非正規人材共に7割を超えた。
フロントスタッフや配膳、清掃などの各業務で人手不足が深刻化している一方で、コロナ禍で他業種へ移った従業員は「賃金など条件が折り合わず、宿泊業への戻りは鈍い」(人材派遣会社)など、フル稼働に必要な人材の確保が難航している。
足元では人手不足で予約の制限や客室稼働の抑制といった措置を迫られた企業も一部で出始めるなか、インバウンドの受け入れ態勢が整わず、需要の取りこぼしなどで業績回復ペースが想定より伸び悩む可能性がある。
旅館・ホテル業界で業績が急回復している。過去1年間に帝国データバンクが調査した全国の旅館・ホテル業界のうち、直近の業況が判明した約800社を集計した結果、約6割の企業が「増収基調」であることが分かった。
コロナ禍で訪日客も含めた旅行需要が消失した2020~21年度に比べて大きく増加したほか、「全国旅行支援」中だった22年10月時点の45%も上回った。
このうち、ホテル業態での増収割合は62%、旅館業態は55%と、ホテル業態での業績回復が目立った。
このほか、「前期並み(横ばい)」は37%と、2022年10月時点から大きく減少した。「減収」割合は1割を下回り、コロナ禍前の19年度と同等の水準まで低下した。
コロナの感染状況に業績が左右され続けてきた旅館・ホテル業界は、コロナ禍当初の2020年4月時点では増収見通しが13%、21年同時点は5%にとどまるなど、各企業で非常に厳しい見通しを強いられてきた。
しかし、22年以降は県民割やブロック割、全国規模の「旅行支援」開始で徐々に業況が回復し、「増収」など先行き好転を見込む企業が急増した。
こうしたなか、23年以降は水際対策の大幅緩和のほか、新型コロナの5類移行など各種制限も撤廃されたことも重なり、国内旅行客に加えてインバウンド(訪日外国人客)需要も急回復している。
旅館・ホテル業界の業況はコロナ禍の悪化局面から脱し、インバウンド増加を追い風に急回復の局面を迎えた。
この結果、4月時点までの各社業績推移を基にした2022年度通期の旅館・ホテル市場(事業者売上高ベース)は、前年度から約2割増の3.4兆円に到達した。21年度の2兆8509億円(0.5%増)に続き、2年連続で前年度を上回った。
過去最高に達したコロナ前の18年度・約5.2兆円から約6割の水準にとどまるものの、前年度比40%超減と過去に例のない落ち込みを記録した20年度(2兆8360億円)をボトムに、回復基調で推移している。
引き続き現状の回復ペースが続けば、23年度の旅館・ホテル市場はコロナ禍前並みの4~5兆円前後に到達する可能性がある。
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