本連載では、日本企業の進出先として想定される世界各国の政経情勢などを取り上げる。
第14回は、フランスを紹介する。
2022年から2023年春にかけての景気は停滞したものの、インフレの勢いや欧州中銀による利上げペースが落ち着く年央ごろからは景気が改めて回復軌道に乗り、中長期的にも原子力産業の強みを生かした独自のグリーン政策が成長の原動力になっていくと期待される。しかし、年金制度改革での強権発動を背景にマクロン大統領の求心力が低下していることは、今後の経済や企業活動にとって逆風となり得る。
フランスの実質GDP 成長率は、2020年に前年比▲7.8% と新型コロナウイルスの感染拡大を受けて大幅なマイナス成長となった後、2021年にはリベンジ消費がけん引役となり同+6.8% と急速に持ち直した。しかしながら、2022年は同+2.6% へと鈍化し、特に年末にかけて景気の停滞色が強まった。
コロナ感染縮小と行動制限解除により人出が戻ったことはプラス材料となったが、高インフレや欧州中央銀行(ECB)による利上げが個人消費などの回復力を削いで景気を下押ししており、そうした状況は2023年入り後も続いている。
フランスのインフレ率(消費者物価の前年同期比)は2022年春以降、ロシア・ウクライナ問題を受けて欧州の天然ガス価格が急騰した影響から、エネルギーを中心に上昇し、10月には+7% 台に乗せた。
その後、2023年2月にかけては、記録的な暖冬などによりガス価格が反落したためエネルギー価格の騰勢が弱まり、インフレ率も頭打ちとなった。
しかし、一方で、人手不足による賃金上昇が続き、その賃金も含めた各種コストが川上分野から川下分野へと転嫁されてきたことから、エネルギー以外の幅広い品目に価格上昇圧力がかかるようになっており、結果として7% 台で高止まっている。
こうした動向を踏まえ、ECBはインフレ抑制のため2022年7月以降、急ピッチな利上げを進めており、2023年3月末までの利上げ幅は累計で3.50%Pt に達している。※1
※1 主な金利指標である主要リファイナンス金利は2022年6月の0.00% から2023年3月には3.50% となった。