経済産業省が2018年に「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を取りまとめてから4年が経とうとしている。コロナ禍を契機に、日本でも大手企業を中心に浸透し始めているDX。しかし、スイスの国際経営研究所(IMD)が9月に発表した「世界デジタル競争力ランキング2022」において日本は過去最低の29位に沈み、後れをとっていることが明らかになった。日本経済の競争力を維持するためにはDX推進が課題であることは明白であり、地域、規模を問わない取り組みが求められている。
先述のように、大手企業におけるDX については進みつつあるものの、中小企業におけるDX 推進は課題や障害が多く、官民挙げての取り組みがようやく動き始めたところだ。
そのような中、帝国データバンクでは業績好調な中小企業を対象に、DXへの取り組み状況についてアンケート調査を実施した。
2022年11月15日~11月29日
郵送調査
帝国データバンク企業概要データベース「COSMOS2」収録企業のうち、以下に該当する企業から独自条件で抽出した4,992社
業績:2期連続増収・増益
規模:中小企業基本法に定める「中小企業」
法人格:株式会社、有限会社、合同会社
834社(回答率:16.7%)
DXについて、「取り組んでおり、成果が出ている」という企業は21.6%(180 社)、「取り組んでいるが、はっきりとした成果はまだ出ていない」という企業は30.7%(256社)であった。合わせて52.3%(436社)と、約半数の企業が、何らかの形でDX に取り組んでいる結果となった。
一方、「取り組んでいないが、必要だと感じている」という企業は、35.1%(293社)であった。
回答企業のおよそ3分の1が、必要性を感じながらも、DX に取り組むことができていなかった(図表1)。
DX に取り組んでいる企業にそのきっかけを尋ねたところ、半数以上の企業が「他社の先行的な取り組みを聞いて」(52.5%、229社)と回答した。(図表1.1)。
「民間企業のコンサル等からの助言を受けて」(13.8%、60社)、「行政が設置した支援機関からの助言を受けて」(3.2%、14社)など、他社からの助言がきっかけとなった企業の構成比は小さかった。また、「行政による補助金等を知って」(11.0%、48社)も1割程度にとどまっており、費用面での支援は、中小企業がDX に取り組むきっかけにはあまりなっていない様子がうかがえる。
中小企業のDXに対する関心を喚起するためには、同業界・同規模企業の、参考となる先行事例を共有する施策が有効と考えられる。
DX に取り組むきっかけについては、上記選択肢以外の「その他」を選択した企業も多かった(31.2%、136社)。そこで、自由回答の内容を12に分類して、DX に取り組んでいる企業全体(436社)に占める構成比を算出したのが図表1.2である。
回答企業の9.6%(42社)は、他社事例や周囲からの助言ではなく、自社内部の意思・要望からDXに着手している。また、「親会社・グループの要請により」という回答が2.8%(12社)あり、グループ全体でDX に取り組んでいる中小企業も少数ながら見受けられた。