事業承継を巡る動きは大きく変わった。全国で事業承継ネットワークが展開され、商工団体や地域金融機関などでは、中小企業に対して「事業承継自己診断」や「会社の未来を考えよう」という働きかけが進んでいる。また、自社株式などについての税務課題に対する事業承継税制も10年間の時限制約はあるものの、大きく改善された。ただ、事業承継に関する支援や情報提供といった点でみると、現経営者(以降、経営者)に比べて、次の時代を担う後継者(候補)(以降、アトツギ)のみなさんに対しては、まだまだ少ないと感じている。アトツギには、経営者には分からない経営の悩みや不安がさまざまあり、事業承継後もそれは尽きない。
この連載では、アトツギが抱えるそうした悩みなどをケーススタディ(対話形式)で取り上げていく。事業承継は100社あれば100通りの方法があるが、主なポイントと解決策のヒントをお伝えできれば幸いである。ぜひ、手と頭を動かしながら一緒に取り組んでいただきたい。第1回は、「経営者との対話の機会をつくろう」と題し、経営者とアトツギが対話を通じて事業の沿革を振り返ることの重要性を取り上げる。